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ウチがぜんぶ攫ってあげる(ドラエマSS)

#SS #ドラエマ


 エマはキスが好きらしい。と、いうことに堅はうすうす気づいていた。キスといっても中学生らしい、小鳥が餌を啄むような軽いくちづけなのだったが、ふたりきりのときはもちろん外出先でも時おりそれをねだるので、さすがの堅も辟易してしまう。

「なに、オマエってキス魔なの」

 クレープ屋の行列に並んでいたエマが堅の手を引き、物欲しそうに上目を使ったので、堅は呆れてそう言った。途端にエマは大きな目をいっそう大きくまん丸にさせて、「そんなわけないし!」と首をふった。

「全然説得力ねーな」
「ちっ、ちがうもん!」
「キス魔じゃないならこんなとこでキスねだんねーだろ」
「だって、……」
 
 と、エマはしおらしく俯いて唇を突き出した。

「放っておいたら堅ちゃん、ほかの女にすぐ攫われちゃいそうなんだもん」

 だからね、ウチが守ってあげてるの。エマは恥ずかしそうに頬をもも色に染めて、そのように言うのだった。

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